「カーナビを使い始めてから、道が覚えられなくなった」と、こぼすタクシーの運転手さんがいます。
新しいサービスの登場で、人間の感覚が鈍くなってしまう現象は、古着転売屋に当てはめて言うと「オークファンを使い始めてから、目利きができなくなった」という感じでしょうか。
実際に私はそう感じています。
昔は、価格、状態、デザイン、ブランド名を基準に仕入れができていたのに、今では仕入れの度にオークファンでいちいち落札相場を確認してしまう自分がいます。
したがって、オークファンに引っかからない、無名ブランドの一点モノなんかは、怖くて仕入れができていません、最近。
ただ、これは「オークファンの罪」というより、私自身の努力不足と言うか、怠慢なので、オークファンを責めるつもりはないんです。
私が言う「オークファンの功罪」とは、ズバリ「相場が均(なら)されてしまうこと」です。
「価格.com」なんかにも言えることだと思いますが、基本的に「お買い得」や「掘り出し物」という現象は複数の売り手と買い手の間の商品価値に対する認識の差異から生まれます。
八百屋A店で500円の洋ナシが、スーパーのB店では300円で売っている。
このような状況で、買い手は「B店で買えばお買い得だ!」「B店に掘り出し物がある!」と感じることができるでしょう。
ただ、B店の店主がたまたまA店の前を通りかかり、500円でも洋ナシがバンバン売れているところを目にしたとします。
B店の店主が洋ナシの価格を500円に改定することは、ビジネスの観点では自然でしょう。
これとは反対に、A店で500円の洋ナシがまったく売れない場合、A店の店長がB店を参考に洋ナシを300円に値下げすることも考えられます。
※例は単純化しています。実際には固定費や仕入れ値の違いで値段が変動するでしょう。
値上げも値下げも、お買い得も掘り出し物も、すべては比較できる「情報」をもとに判断している事柄です。
この例では、AとBはお互いに相手の店頭に足を運んでみなければ価格差を認識できませんが、WEBの価格情報提供サービスは、これをリアルタイムに、オンラインでやっているということになります。
ここでヤフオクに話を戻します。
何が言いたいかと言うと、昔は情報がバラバラに散っていたので、
相場を知らずに高く出品する出品者もいれば、安く出品する出品者もいて、
同時に
相場を知らずに高値で落札してしまう落札者もいれば、安い値段でしか落札しない落札者もいた
と思うんです。だからオークションが面白かった。
もちろん、オークションというシステムのおかげで、ほどよく落札価格は上下していたと思いますが。
ところが、近年はオークファンを使えば落札相場を出品者も落札者も知ることができてしまうので、そもそもお互いにある程度折り合える価格が出来上がってしまっている、と。
これが推し進められると、すべてのものが適正価格に落ち着いてしまう、のではと感じています。
ヤフオク古着転売も、価格差があってこそ成立しているビジネスなので、仕入れ対象のリアル店舗、販売対象のオークション落札者の双方が、同じ情報にアクセスできるようになってしまったら、商売あがったりです。
今はまだ、トレファクで1500円で仕入れたアローズのジャケットがヤフオクで4000円で落札される時代ですが、みんなが「情報」にフェアにアクセスできるようになれば、トレファクはアローズのジャケットを2000円~2500円でしか売らなくなり、反対にヤフオクでは2500円~3000円でしかアローズのジャケットは落札されなくなるんじゃないか、と。
そんなことを考えて昨夜は眠れませんでした。
ぶるぶる。
こんな風に、中間業者はどんどん機械や新しいサービスによって絶滅させられ、世の中の価格は適正になっていくんでしょうね。一消費者としては、まったくもって便利なんですが。